海外中古不動産に係る損益通算等の特例 の創設

海外中古不動産について、近年、節税策として利用されることが流行っていました。

これにつき、税制改正で規制が入りました。

 

海外の建物は、日本の建物と比べて実態上耐用年数が非常に長いものがあるところ、日本の建物の耐用年数の計算を使用して実態よりも多くの減価償却費を発生させ、それにより発生する赤字と他の所得を損益通算し所得税の金額を圧縮するスキームが流行っていました。

 

今後は、上記の方法により海外の中古不動産で赤字が出た分について、他の所得との損益通算が出来なくなります。

 

もっとも、これにより計上出来なかった赤字については、物件の売却時に調整してくれます。

実態と乖離した計算上の減価償却の先取りにつき、他の損益との通算部分まではその先取りを認めない。ただ、先取りとなる分について過剰な減価償却部分を認めないだけであって、先取りできなかった分の所得については最後に調整されるという設計になっています。

 

この改正について、個人的には実態から乖離した形での過度な節税について規制したものであり、妥当な改正かなと思っています。

 

もっとも、この手法をアテにして長期のタックスプランニングを組まれていた方は予定が狂うこととなります。税制の大枠の趣旨から離れる形での節税対策については、少なくとも中長期での税制改正リスクについて考慮しておく必要があると私は思います。

 

上記改正は、2021年分からの適用となります。

教育資金贈与の非課税措置の縮小検討と2019年度税制改正

2019年度の税制改正において、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の縮小が議論されていると、日本経済新聞の記事にありました。

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置とは、曾祖父、曾祖母、祖父、祖母、父、母といった直系尊属がひ孫、孫や子に対しして教育資金として一定の信託銀行、銀行、証券会社などに金銭を拠出した場合につき、上限1,500万円まで贈与につき贈与税を非課税とするものです。

この教育資金の贈与を受けた方は、対象となる学費等の費用にこの教育資金を充てることが出来ます。仮に、贈与を受けた教育資金を使い切れなかった場合、贈与を受けられた方が30歳になったときに、残額に対して通常の贈与税が課税される形で、この制度の利用が終了することとなります。

この制度は、教育資金に充てる金額について贈与額がまるまる非課税となるため、現預金に余力のある方の将来の相続税の節税について非常に効果的であり、制度の導入時にも記事で取り上げました。

制度の縮小内容の案としては、贈与の対象金額の縮小や、贈与を受ける方に所得制限を設ける案が挙げられているようです。

この制度は、もともと2018年度末で一旦打ち切りとなっており、2019年度以降は、再継続するものの、制度の縮小が図られることが議論されているようです。

相続税の対策を進めたい方で、将来学費が必要となるお子様、お孫様やひ孫様がおられ、現預金の余力がある方について、この直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置は非常に効果的な制度です。駆け込みでの利用もぜひ検討されるべきかと思います。