相続時精算課税と暦年贈与の有利不利について

暦年贈与よりも相続時精算課税を利用することをお勧め出来る場合についてなのですが、

1.これから生む収益+将来の評価額が、現在の評価額よりも高くなることが見込まれる資産がある場合
2.税務的な財産評価上の問題で、資産を生前のあるタイミングで贈与すると評価額が下がる場合
3.最終的により多くの財産を下の世代に残したい、という以外の理由で早めに多額の財産を移転させたい場合

のどれかに該当して、「はじめて」相続時精算課税を利用したほうが良い「可能性」が出てくる、裏を返せばこれらの条件に該当しない場合は相続時精算課税を利用する意味はないと考えています。

しかし、

1.については土地の値上がりが当たり前だった昔ならともかく、低金利下、そして高収益が見込める資産もこのご時世そんなには存在しない。とうことで該当するケースは限られる(インフレ傾向が出てくればまた別ですが)。
2.については、そうなるケースはあれど、これに該当するという結論に行き着くためにはかなり本格的な相続対策の検討が必要。
3.についても、このようなケースはレアケース。

そう考えると、簡単には成り立たない条件のどれかに該当してはじめて検討のスタート地点に立てる制度であり、お勧めできるケースは極めて限られると私は考えています。

たまたま相続時精算課税についての質問が続いたので話題にしてみました。

平成25年税制改正と相続税増税の影響 その2

平成25年の税制改正で、相続税の基礎控除が平成27年1月以降減額されることとなりました。

相続税は、相続する財産がある場合に必ず課税されるわけではありません。相続財産の相続税の評価額から基礎控除を差し引き、差し引いた後の評価額がプラスであればその評価額に対して課税がなされます。

つまり、相続財産の評価額が基礎控除の金額を超えていなければ、相続税は発生しません。

これまでは、基礎控除の額は5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)でした。これが、平成27年以降は改正以前の6掛けとなり、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)となります。例えば、相続人が3人の場合、基礎控除の額は8,000万円から4,800万円に下がります。

基礎控除の額の引き下げで注意しなければいけないのは、基礎控除額の引き下げがなくても相続税が発生していた人にとっても、基礎控除の引き下げにより相続税額が増加するということです。

例えば、相続人が3人で相続財産の相続税評価額が基礎控除の控除前で1億円であった場合、相続人が配偶者+子2人であれば、配偶者の税額軽減適用後で改正前の相続税額が100万円だったのが290万円に、相続人が子3人であれば、改正前の相続税額が200万円だったのが630万円になります。

このように、基礎控除の減額は、今回の税制改正によって相続税がはじめて発生するようになる方に限らず、これまでも相続税が発生する状況であった方にとっても十分に影響のある内容となっています。

平成25年税制改正と相続税増税の影響 その1

先月(2013年)3月29日に、平成25年度税制改正法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「地方税法の一部を改正する法律案」が、参議院で可決、成立となりました。

今回の税制改正で、相続税の基本的な部分で2つのポイントで増税となる改正がなされています。

1つが、二億円を超え三億円以下の金額に対する税率が40%から45%に、六億円を超える金額に対する税率が50%から55%となる、高額な一部金額部分に対する税率のアップです。

そしてもう1つが、基礎控除の減額です。

うち、前者の税率アップについて結論から申し上げますと、ここでいう「金額」(金額が何を指すかという説明は今回は省きます)が二億円を超える方は極めて限られます。おそらく、福岡国税局管内(福岡県、佐賀県、長崎県)でこの改正の影響を受ける相続の件数は、多めにみても年30件もいかないのでは、と思われます。

後者の基礎控除の減額ですが、こちらは相続税の課税額が発生するラインが下がることになります。従って、今まで相続税が発生していた人全員に加え、今までであれば相続税が発生しなかった人も影響を受けることになります。

基礎控除の減額の具体的内容と相続税額の影響については、次回以降の更新で触れていく予定です。

(追記) ちなみに、いつからこの改正が適用されるかですが、平成27年1月1日より適用です。よく聞かれるので追記しました。